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宇宙戦艦ヤマト デザイン空間の謎 |
ヤマトの謎はデザイン上の矛盾点ばかりではない。
視覚的な規模と設定上の寸法が異常なまでに食い違う"空間"の矛盾が存在する。
この、サイズのギャップに関して根本的対策が講じられたことは無く、
ヤマトに関与するユニットの相対スケール算定を、ヤマトを基準とせず現物合わせで対応することでしのいでいる。
具体的な問題として切り込む傾向が表面化している割に、矛盾の核心はやんわり避けて通る姿勢ばかりが目立ち、
"古いアニメのご都合主義"と突き放すオチに終始しているのが現状。
しかし、逃げたりごまかしたりしていても何の解決にもならない。
真の正解を謳う以上はここが一体どうなっているのか?真相を探ってみなければならないだろうね。
艦内空間を展開する
艦内レイアウトの規模
クリンナップデザインの骨子となる艦内配置図には、施設間の距離や階層の高度を示す数値がある程度記載されている。
デザイン作業を進める上で空間把握のために目安として置かれたと思われる。
ただ、外形が仕上がっている段階での書き込みなので暫定的な数字ではなく、確定的要素を含んでいるかも。
ヤマトには正式な寸法設定があるけど、これはデザイン上どの段階から関わっている数字なのかは不明。
でも設定画に示されている数値なら、確実にデザイン上に反映されているはず。
居住区・機械工作室の全長と自動航法装置の間隔がわかっているので、
これを基準に各区画を透視図に反映させたサイドビューを作ってみる。
ヤマト透視図に艦内配置図を投影
設計図でなくても図面はだいたい方眼上に描くモノなので、重ね合わせると、
各ユニットは収まりの良い位置関係になっていることが見て取れる。
もちろんクリンナップデザインに一貫性があるので可能な表現なんだけど。
透視図からもう一段階枠組みを広げ、三面図にこの尺度を加算してクリンナップデザインの寸法を計算すると...
クリンナップデザインの寸法
全長約545m・張り出し部を含まない艦体幅約64m・第三艦橋から艦長室頭頂までの全高約145m、となる。
(1cmが10m相当になるように合成)
これがデザイン上のサイズということになる。公式の数値設定は全長265.8m・全巾34.6m・全高77.0m。
寸法は軽く倍以上、空間の規模は単純計算で10倍。
ヤマトには後発のサイズ設定が様々あるけど、戦艦大和から逸脱した数字にはなっておらず、
公式設定を基準に調整されてきている。
艦載機を格納する上で実寸は公式設定の2倍必要との見解もあるが、
設定画はそれを上回る規模を想定して描かれているようだ。
果たしてどうか?艦内の主要設備のサイズを検証する。
波動砲
デザイン上の波動砲本体はおよそ55×15×15m。
設定画に描かれている人物を基準にユニットの規模を想定すると、ほぼこの数値の範囲内に収まる。
公式設定では砲口最大外形8m、シャッター径6m、奥行き10m、という記述があるけど、
これを基準にした場合、波動砲はサイズオーバーとなる。
主砲塔内部
デザイン寸法はおよそ30×24×7m。
感覚的には無理のない規模で描かれているようだ。
公式サイズから換算すると14×11×3mほどの空間となる。
側方展望室
デザイン寸法は25×8×7m程度なんだけど、どう考えてもその5倍以上の広さで描かれている。
設定デザインとの意思疎通まったく無しの異次元空間である。
公式サイズ換算ではだいたい13×3×3mで、ギャップはさらに上乗せされる。
工作区
工場区画全長は100mもあり、工作区がその1/4の規模としてもデザイン寸法は40×50×10mにもなる。
設定画は左舷側の一部を描いた程度のモノということになり、
中央部から右舷側にかけて艦載機が生産可能なくらいの大掛かりな設備を想定しているということになるのかも。
公式サイズ換算では18×21×5mくらいで、この画稿の横2倍程が限界である。
第三艦橋
比較用の人物を基準に見ると、側面全長21.4m、全幅16m、全高7.2mという公式サイズの方が適性な感じがする。
第三艦橋デザイン外観は支柱込みで約45×34×20m。
映像上ではほぼこのサイズに相当する描写もあるけど、デザイン上は公式サイズ想定で描かれたと見られる。
武器コンピューター室
設定画に比較対象は描かれていないが、映像を見る限りでは50×50×20mのデザインサイズに適性がある。
公式サイズでは21×21×7mくらいの規模になる。
中央大作戦室
公式設定には15.0×13.2×2.6mと画稿を完全に無視した寸法が記述されている。
デザインサイズは約30×30×8mで、明らかにこちらが適性サイズである。
第二艦橋
デザイン空間約24×24×8m、公式空間約11×11×3m。
どちらが適性サイズかは、真ん中に立っている人を見れば一目瞭然。
第一艦橋
公式設定には、"倍寸効果による作図(室内長、室内幅それぞれ10mを20mとして表現)"とある。
文面をそのまま受け取るなら、第一艦橋室内はこの画稿が想定する規模の1/4に相当するジオラマということになる。
物語のメインステージがそんなデザインワークで設定されるだろうか?
デザイン上の第一艦橋は約20×20×7m、倍寸効果の必要ない等倍サイズだ。
デザインワーク途中でヤマトのサイズが全面変更されることとなり、
決定稿をそのまま使用する上での言い訳のため、倍寸効果という表現を持ち出したと考えるのが自然?
艦長室
沖田艦長を基準に見ると室内空間は5×4×3mほど。
ところが、公式設定には9.0×4.4×5mという寸法と、第一艦橋は10m下に位置すると記述されている。
これはデザインサイズに相当する数値で、設定画とは整合せず、他の公式設定とも基準が異なる。
艦長室は第一艦橋と同一フォーマットで処理されていて、公式設定から漏れたのかも。
上部戦闘機格納庫
公式設定空間約23×29×5m。デザイン空間約50×60×12m。
格納庫なので艦載機を基準に空間を想定するのが一般的感覚だが、ヤマトからの視点はどうなっているか?
ここには艦載機搭載用パレット40機分の設備があって、機体の移動を最下層で行い、順次昇降させる仕組み。(右上図)
リフト一基の格納容量は4階層フル稼働でデザイン上約16×10×3m、公式設定上約7×5×1mくらいのスペースとなる。
画稿上の艦載機はそのサイズに合わせて描かれた機体であり、いずれも公式設定のコスモゼロとは整合しない。
17.4×8.2×5.8mというコスモゼロの寸法はおそらく、透視図(デザインサイズ基準)の第二副砲下に描かれているコレ。(右下図)
波動エンジン
メインノズルまでをひとつのユニットとしてデザインサイズ約130×30×30m、公式設定約63×13×13m。
これに機関室を加えたヤマトの心臓部ではあるが、大型の設備ほどその落差も激しく、
公式設定サイズでこれだけのパノラマは絶対に見れないよな...
下部大型機格納庫
ブラックタイガーを基準に見ると、着艦口込みで約80×60×12mとなるデザインサイズに適性はありそうだけど、
設備の規格は上部格納庫と同じと考えると、格納用パレットに機体を納めるには窮屈そうな感じ。
公式設定だと約36×28×5m。ブラックタイガーは撮影用の模型と化す。
この分析結果から、ヤマトは全長550m近いサイズを想定してデザインソースが練られ、
公表に際して、戦艦大和と同一規格である旨を形式的につじつま合わせたような当時の状況が想像できる。
艦長室や第三艦橋は、具体的な大和基準で空間を構成した試験的設定画と考えられなくもない。
だからと言って公式設定数値が間違っていると短絡的に決めつけるのはナンセンスだと思う。
宇宙戦艦ヤマトは戦艦大和の転生した姿であることを印象付けるエンターテイメント性を帯びた視点が、
作品世界に対する理解と共感を発動するために重要な働きをしたことはまぎれもない真実。
ヤマトファンを自称する者にとって265.8mという宇宙戦艦ヤマトの全長は、望んでしかるべき値なのだ。
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