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宇宙戦艦ヤマト研究室第二部vol.6 |
ストレート立体化について
立体モノ好きなら「劇中イメージに忠実なモデリング」という言い回しにグッとくる人は多いはず。
そして「ストレート立体化」という言葉も同様の意味に解釈している向きがほとんどだろう。
この研究ページでは少し違う方向性で使用していて、ここを正確に読み取ってもらえなければ基本的に通じない内容もあり、
できるだけ詳しく伝えたいと思う。
単純に一言で言えば「ストレート立体化」は”普通の立体造形をしない”という意味で使っている。
コレだけだと誰にも理解されるはずがないので、どういうことなのかを説明させてもらいたい。
@既成形状の流用をしない
そのデザインとは別の名目で作成された形は、似ていても使わないこと。
デザインラインは単一の指向性で造形することが現物化の最短距離。
極論すると、外形のみ直接表現方法の理想は”塊からの彫刻”。
他から形を引用して混成した時点でその条件からは外れるくらいの気持ちを持てるようになることが理想。
まああまり厳密に定義しすぎると自作モデルなんて全部不合格品なので、
少なくとも違う規格の部品は混ぜないで作る・・・くらいのニュアンス。甘い?
船舶タイプヤマト既製品流用時の外形と設計図のみ立体化時の完成形。
流用したパーツは、市販アイテムでは設計図に最も近い形をしている旧1/700キットのもの。
サイズは同じでもアウトラインのつながりはほとんど無く、
流用込みで完成を図った場合の最終形状が設計図と同じにならないことがイメージできるだろうか?
現実のキットには原本など提示されないため、比較はおろか意識するきっかけすらも与えてはもらえない。
A製作上の都合を形にかぶせない
造形上における物理的アプローチの可・不可によって発生する完成形の達成度に関すること。
先天的な器用さ、工具・素材との相性や得手・不得手、製作環境、工作の難易度、等、
人それぞれ条件は違えども、模型の評価は完成したモノがすべてだ。
とはいえストレート立体化の完成度基準というのは単純に見た目が良ければいいということではなく、
客観的にデザインラインを把握し、再現度を正確に把握できていることが大前提であり、
その上に模型としての完成度が乗っかることでようやく評価が付くといった感じになるのかもしれない。しかし、
見た目の完成度がどれだけ高くても、デザインとのギャップがありすぎる模型はストレート立体化のテイをなさない。
デザインに照らし合わせて何がどれだけ不足しているか自己申告デキることを意味するかな。
バイタルパート区画をそのまま立体化するとどちらのカタチになるか?そんなことは問われなくてもわかる話で、
要するに生産工程や金型の設計からキットの強度・安全性に至るまで、
製品のレベルをクリアするためにはデザインの再現度など優先していられない厳しい基準があることの裏返しなワケだ。
よく「今の技術ならよりイメージに適合するヤマトを作ることができるのでは?」という意見を見るけど、
作る能力が高いことと作ったモノがイメージ通りであるかどうかも、また別の話なのである。
ちなみに船舶タイプヤマトの設計図通り製作できていない箇所は・・・(このバイタルパート周辺で)
・コスモレーダーの張り出し部分 ・艦長室土台のインテーク ・第一艦橋の屋根 ・水平翼先端のコーン ・第一艦橋土台のインテーク ・第一艦橋背面突起形状と設置面 ・第二艦橋前面の曲面形状と接続部分の三次曲面及び対空砲土台形状 ・第二艦橋背面展望ドームと対空砲形状 ・第二艦橋平面形 ・第二艦橋側面インテークと排気筒形状 ・側面対空砲台座張り出し部分の底 ・デッキ上の対空砲台座 ・煙突の楕円・囲い部分の形状とフィン ・煙突ミサイル発射口形状 ・マスト先端コーン部分 ・マスト台座 ・第三艦橋の支柱形状とハッチ部分のヌケ ・アンテナ翼類の断面形状 |
自分で作ったモノだけに再現できていない箇所は実感としてすべてわかっている。
サイズ上再現することに限界もあるためモデル全体ではかなりの不足箇所があって、
列挙していくと「コレのどこが設計図の再現?」と見られてしまうかもしれない。けど、
”言いたいことがあるならまず自分の手を動かしてから”が信条なので、やれるだけのことはやるよ。
B形に主観的な解釈を持ち込まない
”そこに描かれている形をどのように解釈することが正解なのか?”
これは不明点の多いデザインを立体化するためにある程度は必要な働きかけだ。
ただ、メカデザインを直接立体表現するためには、見た目のギャップを増やす主観的解釈はしない方向が望ましい。
デザイン形状に疑問が感じられても、それがイメージに相反するかどうかは案外作ってみるまでわからないモノで、
コレを実践することがデザイン画の矛盾認識を発生させないことにつながることもあったりする。
(ヤマトの立体化上の問題点についての大半がその矛盾点を挙げての意見だったりする)
製作者の技術優先による立体化は改造含めて潤沢に提供されるというのに、時の解釈で完成したモノに批判の目を向ける前に
直接再現された現物を判断材料として差し挟む機会が無いのは、需要供給間のすれ違いを重ねるだけではないかと考えてしまう。
デザインライン自体が立体になることが実際にはほとんど無いので、マニュアル指向の人にはなじまないかもしれない。
「船舶としての条件を十分満たしているから船舶タイプは宇宙戦艦ヤマトの正解である。」
たしかに理屈は通っているけど、それならば作られる対象はヤマトでなくてもかまわない。
理にかなわなければデザインを再現したことにならないのであれば、そもそもなんのためのメカデザインなのか?
理にかなったカタチをヤマトのデザインに投影して楽しむのもいいけど、
ヤマトのデザインそのものをカタチで楽しむのもそれはそれでいいものだよ。
C描線ではなくデザインラインを形にする
描線を再現することとデザインラインを再現することは、実際の完成形を比較すると相当かけ離れた内容になる。とはいえ、
立体造形は外観の説得力で勝負する世界だから、描線に過剰に意味を与えることもアドバンテージであることは重々承知している。
一例を挙げると、モデラーの多くは”折れ線”や”継ぎ目”として引かれた線を”筋彫り”と解釈して作品に反映する傾向が強い。
ガンプラ系作品で定番化している処理で、いまや”やって当たり前”的空気感もある。
昨今は”パネルライン”と称して処理するデザイナーも増えたけど、
メカデザインにこのタイプの描線が用いられることになった本来の目的は、”作画円滑化”のため。
筋彫りという表現は、塗装を引き立てる一要素として取り入れられたモノが一人歩きしたという説もあり、
それ自体に問題があるとはしたくないが、できれば住み分けてほしいのが個人的希望ではあるかな。
合理的に造形するための都合として描線を重視することは、抑揚の無い外形にディテールばかり詰め込む傾向になるようなので。
ここでは描線処理によってデザインラインをつぶさないことが趣旨だと思ってほしい。
複雑なメカを効率よく作画するためにメカデザイナーから提案されたのがこの構造分割線的ガイド。
このラインを溝で表現することが模型では定番となり、筋彫りのために面構成・面形状のアクセントは解消される方向となっている。
デザイン観点からは表面は段差のないフラット面であることが理想であり、
設計図には当然引かれていないし、設定デザインにももちろん線引きはされていない。
既製形状の流用・製作技術の優越・解釈適正化・描線尊重、コレがいわゆる”普通の造形”
理屈抜きでメカデザインをそのまま形にするというだけの話を出したワケだけど、曲解する人が多いかもしれないので一応追記。
こうすることが造形的に正しいとかいうことではなく、デザインされたそのままのメカを形で見せるために、
ストレート立体化という言葉にこんな約束事を課している、このHP内でのみこの内容で使う言葉だと考えてくれればいい。
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