デザインラインの有無
このHPでは"デザインライン"という言葉を何度も使用してきたけど、
ここで言うところのデザインラインが何なのかを具体的に把握できている人はほとんどいないだろう。
また、理解している人でもそれを的確に説明するのは非常に難しいことと思う。
自分もそう。意味は自分なりに理解しているけど、核心部分については「やった者にしかわからない領域」があって、
言葉では伝えようがないモノなのである。
デザインラインについて語る前にとりあえず用意したメカがあるのでご紹介。
1/72 コスモゼロ 前上方から機体外観
この模型のあらましはフォトギャラリーに掲載。
1/72 コスモゼロ 各平面形
設定デザインのストレート立体化を実践中の模型。
ストレート立体化というのは、画線に忠実に作ることよりも、デザインラインをどれだけ客観的に切り出すかがキモ。
主観による造形上の解釈をいかに排除するかが本質なり。
調べてみると、コスモゼロもストレート立体化アイテムの無い、イメージ・生産性優先のモデリングだ。
全長は24cmほどで、旧ディスプレイモデルと同じサイズ。
製作が進めば、写真の差し替えとかするかも。
宇宙戦艦ヤマト本体では複合要因の展開に難儀する上に、現物が無い(前提)。なので根拠を示すことができないため、
ヤマトに通じるデザイン上のイメージ錯綜の経歴(?)があるこの艦上戦闘機で説明を試みたい。
コスモゼロ 全景
コスモゼロ 三面図
設定デザインをトレスして、ある程度情報量を絞り込んだ画稿。
三面図は右サイドを加算してある。
コスモゼロ外形の設定デザインはコレだけだが、
ヤマトの艦載設備や地球地下都市の背景として描かれた画稿の中にもコスモゼロは描き込まれていて、
それらも統合すると下のような後方視点の外観を描くことができる。
コスモゼロ 機体後方から外観
この絵は立体画としては崩れた印象を与えるかもしれないけど、デザインラインを正確に引いて描いてある。
立体的に正しくなくとも、デザインに対して正しければ形にすることは可能だということは、すでにヤマトで実践済み。
だから、画稿の不満や適性については触れずにスキップ。
技術的なことや個人差は考えず、コスモゼロをこのデザイン画通りに立体化すると、誰が手掛けようと同じ形の模型が出来るように思える。
しかし現実には立体化されたコスモゼロに設定デザインのイメージは備わらない。
まずはこのことに焦点を絞って解説していこう。
もしヒマだったら、見ているだけじゃなくて、実際にコスモゼロのストレート立体化、やってみて欲しいんだけどね。
デザインラインのことを、単純にそのメカのイメージに含まれるニュアンスだと考えている向きもあるかもしれないけど、
イメージという言葉の示すところを、できるだけ造形の実際面に則った言い回しで置き換えると、
”デザイン画に沿って模索するべき現実的形状への筋道のこと”...とでもなるのかな。
デザインラインはイメージとイコールで結びつけて提供される類のモノなので、「住み分けて考えろ」と言っても伝わらないか。
立体造形のカテゴリーで、そのメカに三次元適性を持たせる工程と方法論がいったん示されると、
メカデザインの主体は三次元サイドに移る。
これは、メカデザイン自体が立体という名目で描かれるフォーマットである以上、当然の流れだと言える。
そしてその後のメカデザインは三次元サイドの方法論によって資産化し、デザインラインは切り捨てられる。
こうなると、そのメカに二次元フォーマットが逆転して反映されることは不可能となり、資産ベースで更新が図られるのみとなる。
完成度が自然に高まるとともに、整合性のある形状は生産を効率化することにも直結し、
量産を繰り返すことで、その素材は周知徹底・定番化されることにもつながるのである。
コスモゼロの場合、その資産に当たるのがコレかな。
ディスプレイモデル コスモゼロ 前上方から機体外観
ディスプレイモデル コスモゼロ 各平面形
全長22cmほどで約1/75スケールくらいのプラモデル。
もともとはヤマト同様ゼンマイ走行のオモチャをプラモデルに改修した品で、金型自体はほとんどそのまま使われている。
見ての通り、三面図を忠実に再現した完成度の高い模型ではあるが、立体画とはイメージのギャップが大きい。
三面図通りに立体化することが必ずしもイメージとは一致しないという印象を与える点で、自分にとってもヤマトに似た存在だ。
三次元サイドからメカデザインを振り返って考察した時、架空機特有の非合理箇所とかアラの出具合などの実機目線の見解とともに、
「立体化する際の矛盾点」というデザイン画に曲解的な発信が見られる。
もちろん、もともとが物理的にアバウトなメカはいくらでもあるので、辻褄合わせの必須なケースもある。
しかしヤマトのように、デザインラインを造形に反映させずに発生するイメージの欠落が、矛盾認識を招くケースもけっこう多い。
だからといって、送り手側からデザインラインについて通達があるワケではないので、そこにファンサイドの目線は存在せず、
技術面は評価し、センスの優劣を問う、といった価値観に支配されてしまうのが現状のようだ。
この辺の内容はデザインラインに関わる事情と動向についてまとめてみただけで、
デザインラインそのものの説明にはなっていないけど、およその位置づけは見当がつくだろうか?
当該のデザインラインについても説明していく。
こちらが言うだけではただの個人見解になり果ててしまうので、こちらからも根拠を示す努力はするけど、
願わくば、ここを読んでる人にも自力(他力でもいいから)で根拠にたどりつく努力をしてほしい。
冗談抜きで、”やった者にしかわからない”からね。
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