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"宇宙戦艦ヤマト"と"宇宙戦艦ヤマトの正解" |
正解条件を満たす造形
正解条件を崩さない立体化を目指して取り組まれてきた[既製ヤマト]を[ヤマト]とよく比較してみれば、
造形面からどうアプローチしたところで、ヤマト特定箇所の正解形状は出せても、それ以外の形状がそこに正解として共存しない、
という結果を、市販品・個人作品で長年に渡って連綿と提供され続けてきたことばかりが実績としてあるのみ。
正解条件をクリアする造形をいくら追求したところで、出来上がるのはその造形を担当した者のこだわる解釈だけになってしまう。
このことが、ヤマトの形状解釈に無数の幻想があるとみなす根拠と代わり、
世間ではこれに親しみを込めて、生み出された作品を[マイヤマト(オレヤマト)]と呼ぶ。
メカデザインと作画用設定
デザイン核心の最初の分岐点はコレ。
デザイナーにより一本化された画稿(左図)と作画用に現場で供給された画稿。(右図)
一般的にヤマトのイメージと呼ばれる概念は、動画・静止画の骨子となった右側のデザインが元になっている。
作画用設定は戦艦大和の基本フォルムを下地に調整されていて、これが三次元的にも決定力を持ったと言える。
ヤマトのクリンナップデザインで現場作業に貢献したモノは以外に少なく、作品の余剰資産的な存在にすら見える。
宇宙戦艦ヤマトは、文字通り"宇宙を航海する戦艦"としてデザインされている。
しかし、このメカデザインは過去に幾度となく否定見解を発信されてきている。
ヤマトという作品自体がリアル路線を表現しながらも、理論的・物理的適性を欠いたフォルムのメカで世界観を構成していることを標的とし、
キャラクター化したデザインに対して、より細分化の進んだ視野から傷口を広げるアプローチが目立つ。
さらには、直接的に示唆する内容ではなかったものの、デザイン実務を担当した当事者までもが、自発的にか、圧力からかは不明ながら
ヤマトの本体デザインについて否定的見解を誘う記事を、実際に発信されてもいる。
船とロケット
2mメカニックモデルの完成形は設計図から大幅に変更されている。
アニメ設定から内部構造を割り当てたことも一つの理由ではあるかもしれないけど、
基本的には監修者の意向による処置に比重が置かれていたらしい。
確かに設計図を再現した模型では大変な傑作だけど、実際はコレも"正解"モデルである。
船舶設計図として起こされたヤマトは、デザインの統一見解と公式設定に合わせた実艦の規模を想定しながらも、
立体面における正解フォーマットである"ロケット型"に傾ききらないギリギリの調整が行われていた。にも関わらず、
既製品のヤマトは、模型から3DCGに至るまでそのすべてが"正解"を具体化したモノとなっている。
ヤマトのクリンナップデザインは記号であり、立体には立体面の合理性と都合がある旨の、明確な住み分けを体現しているのである。
理論攻撃を受けては立つ瀬がないヤマトは、単体の情報が高度で雄弁な模型分野では、リアル路線として通用しないことが明白。
ロケット化は必然の流れであり、造形の都合にもかなう最適な処遇だったと言えるかもしれない。
旧シリーズ後期にヤマト外観補足用として作成された側面図。
商品パッケージ向けのビジュアルはもちろん、作画用設定としても使用されているけど、
ヤマト基本形の整合を意図したモノではなく、現場での艦容把握には初期三面図が割り当てられている。
そのため、主役メカでありながらヤマトには動画の安定感がまったく備わらないままだった。
ヤマト旧来のファンから断続的にリークされる情報は、旧作への理解度が低い新しいファン層にも時間をかけて浸透していったようで、
情報そのものに触れてはなくとも、立体つながりで形骸化した認識を持つ人も多いと思う。
旧作ではデザインを継ぎ足しながらも、決して排除しなかったデザインポリシーである"船"という概念を、
[PS版]や[復活篇]ではオフィシャルデザイン規格で決別した。つまり、
立体造形が一貫して持ち合わせてきた"正解"は公式と認められ、理論的に考えればヤマトは送り手にも受け手にも確かな形をすでに獲得しているはず。
ヤマトの正解という形
コレは1/350プラモデルの改修工作に取り組んだモデラーによって起こされた、決定版フォルムを目指すための模式図。
立体造形の側からヤマトがどう見えているかが非常によくわかる資料だ。
造形の心得を持つ人の大半は、同じではなくとも近似したビジョンをヤマトに投影している。
喫水線となる横ラインが、基準排水量を示さなくなっていることがわかる。
"ヤマト"と"ヤマトの正解"の関係
どちらもメカデザインとして戦艦大和が基本モチーフであることに間違いない。
ただし、デザインフォーマットを提唱した人間が二人いて、それぞれの流儀が混在しているように感じられる。
ひとつは海上船舶を最終回答として完成し、もうひとつは大和型宇宙ロケットを追求し、今も完成に至っていない...
この"船"を基調としたクリンナップデザイン[宇宙戦艦ヤマト]。そして、
"ロケット"を基調とした作画用設定[宇宙戦艦"大和"]。
もちろん研究過程からの推論に過ぎないけど、立体面で後者が追求されている現状は、
造形者が本能的に完成した姿が見たいモノ、を示しているのかもしれない。
"正解"整合性の進化
模型視点におけるヤマトは"艦船的艤装のなされたロケット"である。
ヤマトはノズルと艦体接合面の処理や尾翼スパンの統一などがより流麗となり、
流線形フォルムのロケットとして[宇宙戦艦ヤマト2199]に至る。
多くの造形師はヤマトのデザインに問題点を見ようとしているワケではなく、理にかなわない形状を出すのに抵抗があるということのようだ。
1/350改修作例を手掛けた本人からも、再現の忠実さより模型として完成形の適性を追求する姿勢が大切とのコメントが綴られている。
造形師のプライドと価値観の置き場所は、絵師とはまったく異なるのだが、不思議とヤマト造形には奇妙な一致を見る。
ここに至ってもヤマトはクリンナップデザインを比較対象として、あるいは形状の基準に見立てた見解は相変わらず続いている。
否定する姿勢を前置きはするが、既製・進行中の作品検証に使用され、イメージ肯定の条件と位置づけられる。
古参・新参のファンを問わず、この傾向は新解釈が世に問われるたびに表面化してくるようだ。
研究者としての相対的意見を言わせてもらうと...
"正解"に理解を示しながら、排除した形でモンタージュ写真を撮り重ねて見ているような、そんな雰囲気を感じるところかな...
ヤマトのストレート立体造形が現物で存在しない限り、そこ(ロケット)に無いイメージの核心(船)を求めても具体化しようがないと思う。
デザインフォーマットが違うモノに向けて、形状のギャップを埋めることに何の意味もないから。
これって定義が一方的過ぎると思う?
実際に[ヤマト]を形にしてみれば、形に関するいろいろな観点がそこに帰結するから、イヤでも自然にわかってしまう。
宇宙戦艦ヤマトの立体造形は一貫して"正解"を表している。そしてそれは最初から"宇宙戦艦ヤマト"のモノではない。
意味が伝わるか伝わらないかはともかく、コレが自分からの現状に対する答え。
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