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同心円メインノズルによる外形への副作用 |
設定デザインの立体ヤマト
あまりにも長期に渡って設定デザインの造形に着手されないことにより、形状解釈の一本化は不可能、
ファンの数だけヤマトは存在するという結果論で締めくくられるヤマトの立体造形。
これに関しては、ヤマト設定デザインが具体的にどういうフォルムを描くのかという視点には一切触れず、
フォーマットの無いまま形状の解釈だけが発展し続ける不思議な状況を招いている。
"設定デザインを立体化すると矛盾する"ことは念頭に立っても、"設定デザインを立体化してそれを基準に検証する"
というスタンスはすでに取れない所まで来ている。
しかし、真の正解到達のためには避けて通れない道である。
では、実際にその矛盾点を検証し、立体面の問題を分析してみよう。
樹脂模型後方からの外観
デザイン上の基本形状を直接立体化すると、中心軸が少し上にズレた楕円筒を絞り込んだ形になる。
ヤマトは絵的にこのような描かれ方はされなかったので、そもそもビジョンとしてこのように表現する前提は無い。
これはイメージ重視が求められるヤマト立体化において、避けて通りたい道であることは確か。
立体上のメインノズル寸法
背面図を軸に三面を展開すると、縦幅は揃うが横幅は足 | |
立体メインノズルのテーパー
メインノズルの形状は上下非対称なので、ヤマト後端からメインノズルのアウトラインを引き伸ばして同じテーパー角で結ぶと、
囲まれた空間はもちろん上下非対称になる。
これにより、ヤマトの重心バランスは下半部寄りとなっていて、三次元的な安定感を獲得しているようだ。
単純明快な表現をするなら、ヤマトのデザインは"船"となっている。
絵的な重心バランスは画稿それぞれに持たせれば済むけど、立体的には一本化が望まれるはず。
でも、コレを造形の土台に用いるワケにはいかないのが製作サイドの悩み所だろう。
これだけでもうわかったと思うけど、ヤマト立体造形の基本方針に楕円形の艦尾形状を盛り込む選択肢は存在しないワケ。
他の部分でどれほどイメージとの乖離を招こうとも、製作サイドはここだけは折れることなく主義一貫してきたのである。
(と言えるかどうかは微妙だけど...)
立体造形のヤマトに課せられた運命
精密設計図による検証が残したモノ
メインノズルは同心円形状で造形され、設計図によって
精密設計図の概要を見て、気付いている人もいるかもし こういう面でも、立体ヤマトに真の正解は必要だと思う。 | |
メインノズルが同心円形状であることは本編映像上のイメージによる確定要素で、
立体造形においては同心円ノズルで艦体後端を締めるのが基本である。
メインノズルは艦体形状を決定するマスターピースの位置付けとなっていて、
ヤマトのフォルムはその規格に矯正する形で整合を取られるため、外観に一貫性が無いのである。
1/700旧モデルメインノズルのテーパー
側面形換算同心円のノズルからテーパーを引き伸ばすと、上下左右対称型のスリムなアウトラインが出る。
艦底や舷側がデザインラインから大きくはみ出す形になっているのがわかる。
ノズル形状からも立体造形のヤマトは"ロケット"や"潜水艦"と同じカテゴリと考えていい。
設定デザインと1/700旧モデルの艦尾平面形比較
艦体の最大幅は同スケールで1/700モデルが上 | |
1/1000旧モデルと樹脂模型の後方パース比較
既製品の中では設定デザインにスケール比が最も近い | |
同心円ノズルによる副作用
メインノズルのテーパー角度は側面・平面で同一となり、ノズル中心線がわずかに降下する。
物理的には重心が上がるということなんだけど、この変化は他の副作用と連動して影響力を増す。
目に見えてわかりやすいのはサブノズルとカタパルトの設置間隔が狭くなること。
ノズルに近い区画断面が円形になることで横方向への張り出しが制限されるため、トータルでは縦長の配置になる。
それと三枚の尾翼が同心円にレイアウトされる傾向も副作用のひとつと見ていいかも。
側面形直径換算成型による副作用
主にPS版ヤマト以前の旧アイテムの規格。
ヤマト三面図側面形のノズル接合部寸法のメインノズルを基準に据えたヤマト艦体は、
フォルムを減算する形で矯正されるため、平面形がノズル直径まで絞り込まれる形になる。
宇宙戦艦ヤマト'98と旧設定の艦尾平面形比較
PS版ヤマトは旧設定平面図のメインノズル口径を採用し |
宇宙戦艦ヤマト'98メインノズルのテーパー
平面形換算メインノズルテーパーを引き伸ばした図。
艦体を覆い隠すように広範囲をカバーするアウトラインが出てくる。
平面形直径換算成型による副作用
ヤマト三面図平面形のノズル接合部寸法のメインノズルを基準に据えたヤマト艦体は、
フォルムを加算する形で矯正されるため、側面形がノズル直径まで拡張される形になる。
この要素をデザイン面で消化したのがPS版ヤマトで、まるでヤマト立体造形上の都合を見越したかのように、
ノズル中心と艦体中心の高度を一本化してフォルム調整されている。
ただしこのPS版ヤマトは同心円ノズルではない。
決して製作サイドへの歩み寄りではないことも理解しておく必要があるだろう。
1/350スケールモデルと旧側面図の比較
ディフォルメと言ってもいいくらい、メインノズルの艦体占有率が高い1/350モデル。
大口径化によって寸法上のスケール感後退を中和するための処理で、現在のヤマト造形では定番の加工。
サブノズルやカタパルトの位置関係を含め、艤装への影響はさることながら、
このケースだと視覚的に30%程度の全長圧縮感を与えることになる。
平面形直径換算ノズル形式はここからさらに副作用の派生が見られる。
同心円ノズルの影響として複合的に作用するのが接合部と開口部の直径と艦体への占有率。
同心円ノズルの造形の性格上、艦体とは別パーツであることがフォーマットなので、
ノズルテーパー角度と一本化するために艦体側を無理矢理合わせにいくことで艦容を変動させる要素。
占有率が高いと前方パースが弱くなり、低いと後方パースが弱くなる理屈なんだけど、
ヤマトはパース込みで設計されるのが通例なので、艦容を寸胴に感じるモノほど占有率が偏っていると思っていい。
整合処理の効きめは、ノズル接合部にくびれや引き込みカーブがどの程度表面化しているかで判別可能。
ヤマト立体形式の分離
極端な言い方をすれば旧モデルと新モデルは、メインノズル縦径タイプと横径タイプそれぞれを同心円型別バージョンとして立体化した、
設定デザインの整合不能箇所を切り分ける、今時の製品化思想を色濃く反映した造形だろう。
製品としてメジャー化したのはPS版新設定以後だけど、それまでのキメラ指向にこの要素はすでに形になって表れている。
ノズルと艦体の接合位置
平面形換算ノズルによって浮上した新解釈から、旧ヤマトのフォルム再現に転用するという選択肢が派生。
旧ヤマトは喫水線よりも上の階層でメインノズル中心線を接合しているけど、コレを平面形換算ノズルで調整するワケ。
平面形換算ノズルは側面形換算のモノよりもテーパーが浅い分、艦体を円形断面に落とし込む効果が強い。
PS版ヤマトは中心線合わせの設定デザインなので問題は無いけど、コレを旧ヤマトに合わせて軸線を上げることで、
造形的には甲板のレベルを上げることにつながっていく。
ヤマト立体形式の逆行
平面形換算同心円ノズルの接合位置を中心線から上の階
なお、デジタル造形によるヤマトはすべて旧1/700モデル | |
副作用圧縮の限界
円形断面の艦体では中心線から離れるほど表面積は狭くなるため甲板幅は削られ、艤装は密集する傾向になる。
艦幅を設定デザインレベルまで引き戻せても結局艤装配置は再現不可能なワケで、新規フォーマットでの対処は必然の産物。
甲板のレベルを下げると甲板面積は広がるものの、艦体後部のレベルはメインノズル接合面以下には下げられない。
ノズル直径の範囲は形状解釈による改変を受け付けないため、この範囲外に副作用抑制処理を掛けることになる。
絵では単純な変化に見えるけど、これは製作サイドにとって大変なジレンマとなって来るはずだ。
ヤマト立体造形の核心は、設定デザインラインを表面化させることなく、いかにして説得力を持たせるかにある。
ここに示した通り、このメインノズルありきでの造形は、ストレート立体化よりもはるかに難解な内容。
同心円ノズル自体は旋盤加工などで簡単に削り出せるモノかもしれない。
しかし、それに伴って発生する艦体全域に渡る矯正作業は、生半可な技術とセンスでできるような仕事ではない。
製作サイドの"ヤマトを形にしたい"という、ひたむきな情熱のなせる業以外の何者でもない。
自分のマイヤマト像に合わないからと、頭ごなしな否定ありきの評価はしないで欲しい。
こういう人知れず水面下で積み重ねられた努力と苦悩を理解し、言葉を選んでほしい。
ヤマトの造形を実体験した一ヤマトファンとしての切なる願いである。
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